研究

Queer Studiesの基礎(歴史編)

同性愛者の存在が近代になって認知されたのは1869年で、スイス人医師Koruly Maria Benkertが”homosexuality”という用語を初めて使った。しかし、19世紀において、同性愛者はある種の病気としてしか見られていなかった。英語圏でhomosexualityという言葉が広く使用されるようになったのは、1890年代以降だという。同性愛者の人口などの統計にアクセスしたわけではないので、なんとも言えないが、彼らの存在は社会的認知を受けるほど大きなものにはなっていなかったようだ。もしくは、単に存在そのものがheterosexualな体制や制度に脇へ追いやられていただけなのかもしれない。 彼らの存在が、急に大きくなったきっかけは第二次世界大戦だという。この時、兵士や看護婦など、それぞれが同姓だけのバラックやキャンプで生活を強いられることが多く、その中で自分の中の同性愛的な傾向に気づいていった者が多いという。

戦後の1950年代に入ると、サンフランシスコなどが代表例かもしれないが、世界の大都市圏でホモセクシュアルな男性や女性のコミュニティーが急成長を見せた。彼らをターゲットとする資本主義的な空間も現れてきた。たとえば、同性愛者向けの酒場など、出会いを提供する場所や、彼ら向けの性風俗産業などである。 1960年代に入って、gayという言葉が男性の同性愛者を指し示すようになってきた。gayという言葉は、もともと楽しさや幸せといったポジティヴな意味合いが含まれていて、男性同性愛者達が、自分たちの呼称を自ら選び取ったことの意味は大きい。

1970年代に入ると女性の同性愛者を指してLesbianと一般的に呼ぶようになる。これは、1960年代のウーマン・リヴとの関係があるのかもしれないが、詳しいことはいまのところわからない。

1980年代は、AIDSの流行とそれに付随した誤解などから同性愛者たちは広く迫害にあった。

1990年代に入ると同性愛や同性愛者をテーマにして、多様な視点や手法が用いられた映画が続々と登場し、それらはNew Queer Cinemaと呼ばれている。その中には、今まで同性愛者がハリウッド映画などが流布してきたmisrepresentation(まちがった表象)を払拭して、新しいポジティヴな表象や社会認識をうち立てようという野心的な作品も多くある。また、Queer Cinemaはどんどんポストモダン的な多様性を帯びるようになってきている。  婦人参政権運動・フェミニズム・queer理論の動きなどをまるまるスキップしているので、厚みのないスカスカの歴史に見えなくもないけれど、基礎的なところだけ、かいつまんでまとめてみました。

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コメント

    • Tak
    • 2003年 11月 26日

    日本にいた時映画を見てると「queer」はどう聞いてもネガティブなニュアンスだったけど、アメリカに来てそうでもないことを実感しました。たしかにフェミニンな男性やゲイセクシャルな人を罵る時に「queer」は聞くけれど、それでも「queer」には、繊細でお洒落で情深いイメージがあります。最近MSNBC(だったかな?)でやってる「Queer’s Eye for the Straight Guy」という人気番組があります。「Fabolous 5」と名乗るゲイの男性が得意のセンスで”ダサイ”ストレート男性を改造するという内容。日本からでると(特にwestern culture)じゃ、ゲイカルチャーは見ない振りできないくらい大きな社会。あと半年で日本に戻るけれど、アメリカのゲイカルチャーから離れるのが惜しいくらいです。
    「ゲイ」の言葉の由来びっくりしました。彼等が自分で名前をつけたんですね!!社会的にパワーストラクチャーがある場合ほとんどが、強者が先に弱者を「naming」「labeling」すると認識してたので驚きました。

  1. queerはもう、それほどネガティヴな文脈では使われないのではないかと思います。僕の場合は、queerと聞くと、もともとの口語のstrangeだとかunusualだとかいった意味合いよりも学術的な響きをむしろ感じますね。
    ただ、homosexualと呼ばれることはあまりいい気分がしないみたいですね。直接的すぎるというか。日本語であらためて「この人は異性愛者です」「同性愛者です」といった風に紹介されたら性的な趣向が人間のすべてを語っているようで当事者はやはり嫌な感じがするでしょうね。だいぶ前に見た映画(Happy Together)の話ですが「おまえはhomoだな」と主人公が相手に冗談めかしながら一言いった瞬間、言われた本人がかっとなって主人公を殴りつけるシーンがあった記憶があります。
    「Queer’s Eye for the Straight Guy」というのはなんともすごいタイトルですね!しかも「Fabolous 5」ですか。番組の内容を見てみないと雰囲気などわかりませんが、明らかにqueerの表象をenpowermentしている印象を受けます。今度アメリカに行く機会があったらぜひとも見てみたいです。アメリカのことだから、もうその番組に関して学術的な論文を書いている人がいるかもしれませんね。
    僕はそれほどゲイ・カルチャーに接触する機会がありませんでした。いや、ほとんどなかったに等しいですね。サン・ディエゴに住んでいたときに、ゲイ・パレードなるものを見てびっくりしたくらいでしょうか。サン・ディエゴにもサンフランシスコほどではないにせよ、ゲイの人々が集まっているエリアがあって、なんどか足を運んだことがありますが、当時はほとんど関心がなかったのでいろいろなことに気づくことができなかった気がします。
    Takさんはより身近に感じているようですね。とても貴重な体験をされていると思いますよ。

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