ストーリーの世界に勧善懲悪はつきものです。
実際、ストーリーには、ものごとの善悪、重要か無意味か、安全もしくは危険か、誰が敵で味方なのかということを整理してみせる機能があります。
たとえば、水戸黄門。ご老公ご一行以外には、物語のはじめのうち、誰が善人で誰が悪人かははっきりしません。
しかし、クライマックスを迎えたころには、白黒ははっきりしています。
物語は登場人物の関係性を交通整理する役割を持っているわけです。
ところで、なぜこのような勧善懲悪の筋書きに私たちは魅了され、それに飽きないのでしょうか。
おそらく、この種のわかりやすい筋書きに遭遇することが私たちの現実の生活の中では少ないからだと思います。
実際、社会は複雑化しています。
白黒がはっきりしない状況も増えています。
それゆえ、善悪のはっきりとした対立を見ることは少なくなっている気がします。
そうした複雑な現実を単純なフィクションで埋め合わせする必要はむしろ増えているもしれません。
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