文章術

文章に採用する具体例にモレ、ダブりをなくそう!

論理的文章表現の考え方と実践

文章における具体例(実例、実験例、統計データなどを含む)は読み手とイメージを共有し、読み手に議論の内容を促進するために不可欠な要素だと言っていい。

その具体例選定のバランス次第では両極端な結果を招くので注意が必要だ。その選定がバランスよく行われれば、説得力が増し、議論にも信頼性を付与できる。その逆であれば自分の都合のいい例を引っ張り出して無理矢理仮説をサポートしようとしている、といった印象を与えかねない。

examples.jpg

齋藤孝はそういった場面で、「できるだけ離れていて重ならない」、距離の遠い、関係性や関連性を見つけにくいものをあえて選ぶべきだと示唆している。そうすると、つながりやそれに共通する筋のようなものが簡単には見えにくくなる。それゆえ書き手はより深いレベルで論理的つながりを考察する必要が出てくるからだ。そこにつながりや筋を見いだして明確に説明できたときに、オリジナルの分析力や洞察力を発揮することで、読み手に多少の驚きを与えつつも、納得感を与えることができるからだ。

この斉藤の考え方はMECE(ミッシー)のコンセプトとほぼ重なり合う。Mutually Exclusive Collectively Exhaustiveを略したのがMECEである。つまり、議論対象や採用する具体例などに「モレとダブリ」が発生していないかを意識するのだ。

実は僕自身、ペーパーがほとんど仕上がる段階で読み直している時に、自分の採用した具体例にモレがあったことに気づき、一部の執筆箇所を大幅に修正する羽目に陥った。

こういった手戻りによる無駄な時間を発生させないためにもMECEを視野に入れ、論文や文章の構想段階で採用する具体例や事例のバランスをとっておくべきことの重要性をその失敗から学んだ。つまり、MECEの概念を知識として持っていても意味がない。脳味噌に刺青する(tattoo into my brain!)くらいに鮮明に刻みこみ、重ねて実践していくことで体得していこう。

?

原稿用紙10枚を書く力
原稿用紙10枚を書く力

posted with amazlet at 08.09.19
斎藤 孝
大和書房
売り上げランキング: 10761
おすすめ度の平均: 3.5

2 知能こそ必要!書く力は訓練ではツカナイ!
3 読者の立場
3 文章執筆の教科書
3 10枚の壁を乗り越えるためのアドバイス集
5 何より「書く」ことは公共性を意識しなければならない、という姿勢を確かめられて良かったと思います。

※この記事で使われている図は齋藤孝『書く力』(大和書房、2004年) 120ページの図を参考に作図し、一部内容を阿久澤がアレンジしたもの。

?

ピックアップ記事

  1. One Book, Three Points, One Actionから始めよう…
  2. ストーリーは「心」を動かすための演出
  3. 日常のコミュニケーションにストーリーを!
  4. 相手にアクションを求めるなら「失敗談」と「成功談」をセットにしたストーリーを伝え…

関連記事

  1. 文章術

    文章の全体像を面と線でとらえておく

    論文や評論などのまとまった文章を書くさいに実際に行っている段取りがあ…

  2. 文章術

    「仮説」を立てる習慣を! ―文章表現を苦痛や苦手にしないために―

    仮説を立てておくと、文章を書いていく作業がかなり効率的になる。仮説と…

  3. 文章術

    エディタのアウトライン機能で鳥の目 蟻の目

    長文を書くさい、なにか効率的な方法をあなたはご存知ですか?私の場合…

  4. 文章術

    MECE(モレなくダブリなく!)を活用するための3つの切り口

    文章を組み立てるさい、具体例や事例や証拠などの複数の要素を組み合わ…

  5. 文章術

    報告書作成の即戦力 → 5W3H

    報告に必要なこと  事実を過不足なく伝える上司やプロジェクト担当者…

  6. 文章術

    文章の切り口を明確化するための3つのポイント

    文章を書くとき、テーマをどのようにしぼっていくのか。しぼったテー…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

最近の記事

アーカイブ

  1. 日記

    東京スカイツリー、お茶の水から
  2. ストーリー思考

    フレームワーク習得に役立つ「ストーリー型学習教材」活用のススメ
  3. ストーリー思考

    ストーリー形式のオーディオブックを好む3つの理由
  4. 広報・PR

    戦略的パブリシティ
  5. 日記

    雑誌「月刊店舗」 4月号
PAGE TOP