ロジャー ダニエルズ 『罪なき囚人たち―第2次大戦下の日系アメリカ人』(川口博久訳、南雲堂、1997)
筆者のロジャー・ダニエルズはシンシナティ大学のアメリカ史の教授で日系アメリカ人関係の著書が複数あり、本書もその中の一つである。
この本で貫かれている問題意識は、第二次大戦下のアメリカで日系アメリカ人の強制収容がなぜ起こったのか、というものだ。その点を多角的な視野から簡潔だが丁寧に検討している。
また戦後補償の問題の流れを丁寧にカヴァーしてあるので、この問題のより大きな流れに関心を持つ方には役に立つだろう。最終章に近い部分では、アメリカ社会において今後同じような民族や人種に対する偏見が起こるやもしれない可能性やそれが起こりうる条件について触れている。
日系アメリカ人強制収容問題のケース・スタディーから、より広範な偏見・差別・迫害の問題一般についても読者に思考の材料を提供するような構成が意識されている点も評価できる。
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