教育

文芸特殊研究1(第一回)

 ジャーナリズム論2を終えてすぐに、駆け足に湯山玲子先生と初顔合わせをする。湯山先生は、元『ぴあ』の編集者で『SWITCH』などへの寄稿や、映画パンフの編集、『ヴォーグ・ニッポン』での“おんなひとり寿司” といった名物連載、クラブ・マガジン『LOVE PA !! 』『フロアー』元編集長として業界では知られている。
 授業開始時間が迫っていたので簡単な挨拶をした程度で、ほとんど時間をおかず、新井先生とご一緒に教室へご案内する。文芸特殊研究では新井先生と湯山先生が共同ホストになって、いろいろなゲストを招いて話を聴いていく形式を取るそうである。この授業も「ジャーナリズム論2」同様、教室は学生でいっぱいである。
 しかし、このクラスは授業を通して本格的な雑誌を最終的には制作するというプロジェクトが予定されている。さすがに100人全員で雑誌を作るわけにはいかないし、収拾がつかなくなる可能性が高い。またきめの細かいケアができないかもしれない、という事情から、学生を30人前後に絞ろうという打ち合わせが授業開始前にあった。
 授業概要と数人のゲストについて触れた後、すぐ受講者選考の話になった。立ち見の学生のために椅子を見つけて座らせるとそれぞれの学生に400字詰め原稿用紙2枚ずつを配布した。「これから受講者の選考試験を行います。黒板に書かれたテーマについて、800字以内で書いて下さい。タイムリミットは4時まで。選考の後、発表は本日6時を予定しています」新井先生が宣言し、湯山先生が黒板に「あなたがあって話を聞いてみたい人物とその理由を述べなさい」と課題を板書し、作文による選考試験が始まった。開始時間は午後3時ちょっと前なので試験時間は約1時間。教室にいた学生は最低でも80人。選考の結果受講できるのは30人前後という話を先生方がされたので、半分以上の学生がパスできないことになる。学生も必死だ。
 選考風景

その間、ビデオ・カメラなどを片づける。僕と同じ時間帯には他のTAが複数勤務しているので、必要とあれば強力を仰いでいいという話を助手の山下先生がされていたのを思い出す。いずれにせよ、僕は留学予定で後期は大学の業務に携われない予定である。二時間連続の授業補助でもあるし、後期のことを考えれば他のTAの誰かに引き継ぎがてらに手伝ってもらった方がいいという判断をして、コンピュータールームにいたTAの松下君に声をかけると、快く引き受けてくれた。
タイム・リミットの15分前に教室に行く。4時までにほとんどの学生が2枚の400字詰め原稿用紙を文字でびっしりと埋めて提出した。松下君と一緒に原稿を持って先生方の控え室へ。積み上げられた学生の作文を前に、選考作業が開始された。さすがお二人とも、現役編集長と元編集長である。ものすごい早読みで、学生の原稿を読んでいく。まず簡単に○(合格)×(不合格)△(ボーダーライン)に分ける。その後、新井先生と湯山先生がボーダーラインの原稿について意見交換とディスカッション。だいたい20数名がこの段階で決定。その後、敗者復活戦として×原稿に目を通して、いくつかピック・アップ。約一時間経過した時点で、新井先生はハワイへこれから出張のため空港に向かわねばならないということで選考会場を後にした。その後は、湯山先生から意見を求められたので松下君と僕も原稿を読み、感想や意見を述べた。ぎりぎりのボーダーラインの学生選びに議論が白熱して、6時発表の予定を過ぎてしまった。掲示板の前に集まっていた学生には発表が遅れることを告げて選考を続ける。最終的に合格者として33名の学籍番号と名前を発表した。選ばれる学生も大変だが、選ぶ先生方も大変なのである。(2003.4.17)

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