文藝春秋 (2006/04)
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googleという灯台がwebの海で光を照らす
確かにグーグルのことを中心に書いていたが
既存システムの凄まじい破壊と再構築
また、googleが今後のインターネットだけでなく、あらゆるネットワーク環境において大きな影響力を現在発揮していて、それがさらに強まることと、その功罪、つまり光と影についてバランスよく説明されている。
googleは、圧倒的なデータベースの充実により、政府や国際機関を凌駕するような巨大な権力を持つ存在になりつつある。
筆者は終盤で、デイヴィッド・ライアン教授による監視社会モデルの変遷を紹介している。
ビッグブラザー・モデル(イギリスの社会小説家ジョージ・オーウェルが『1984』の中で示したような国家による監視・統制社会モデル)
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パノプティコン・モデル(フランスの哲学者ミシェル・フーコーによって提示されたシステムによる自発的服従作用モデル。パノプティコンはジェレミー・ベンサムが考案した監視塔を中心に囚人棟を配置し、いわゆる一望監視を可能にした刑務所施設の名称)
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アセンブラージュ・モデル(「国家による監視とマーケティング的な監視が結びつき、監視がネットワーク化されている。監視されていることさえ気づかない」p234)
googleは「インターネットのパノプティコン」という結論で終わっている本が多かったが、新しいアセンブラージュ・モデルを知るに至ると、考えを改めざるを得ないだろう。
つまり、googleは最後のアセンブラージュを体現する主体たりうる。ネットワークに支えられた巨大データベースによる新しい監視勢力になりうるのだ。
僕が読んできた他の類書は「いわゆるグーグル八分」を紹介して、簡単にこの問題を指摘するにとどまっているが、本書ではもう一歩踏み込んだ感がある。新書の読みやすさの中に、深い洞察を部分部分で感じさせる一冊だ。googleだけでなく、ネット社会やネットビジネスの未来像に興味がある人にもお薦めしておこう。
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