『下流社会』

三浦展『下流社会』(光文社新書、2005年)を読んだ。
 日本社会の若者世代の生態の二極化をさまざまな形で浮き上がらせる内容である。特に僕自身が属している団塊ジュニア世代(1970年代前半の第二次ベビーブーム世代)をその主な分析・検討の対象としていて非常に興味深く読んだ。
 これまで、日本国民のほとんどは自分が「中流」だという風に認識していたと言われている。こういった、中流意識を持つ人口が若年層を中心に減り始め、自分を「中の下」もしくは「下」と見なすような人々が若年層を中心に急速に増加している。こういった見方をさまざまな切り口から本書は論じ、その要因の仮説・検証も行っている。


その中で「自分らしさ」を強く志向する人々は下流を形成する傾向が強いことが論じられている。その理由を著者は「自分らしさ志向が高いことは自分らしさを持っていることを意味しない(p167)……自分らしさにこだわりすぎて、他者とのコミュニケーションを避け、社会への適応を拒む若者は結果的に低い階層にする属性が高い(p174)」からだと分析する。この引用だけ読むと、若者の生態にまったく理解がない堅物だとこの著者から印象を受けてしまいそうだが、そんなことはない。かなり、柔軟かつ広範囲にリサーチして分析した結果、そういったことが言えそうだ、ということなのである。同世代の人間、またつきあいのある僕より若い世代を観察してもおおむね筆者の主張に同意できる。
 日本の産業構造の変化と若年層のフリーターやニートと呼ばれる人々の出現に関しては各方面から批判的・肯定的両面から論じられているが、さしあたって全体像を見渡してみたいという気持ちがある人には本書は打ってつけだろう。
 追記:この本では階層化による消費者の分裂と銘打って典型的な消費者像を女性と男性とに分けてヴィヴィッドに、いささかユーモラスに描き出しているが、この中の「ロハス系」と呼ばれる男性消費者像に自分が重なる箇所が複数あって思わず苦笑いしてしまった。

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