J-Frontは日本大学芸術学部文芸学科此経ゼミナール(学部三年対象)の研究報告誌だ。サブタイトルには「環境と文化変容」日本の最前線、とある。さまざまなアプローチから学生が自主的に自分のテーマについて記事を書いて掲載している。紙媒体のフリー・ペーパーとインターネット上ではブログにて情報発信を積極的に行っている。
今回は「京成電鉄研究」をテーマに掲げている田中直希君の「時刻は午後4時」について簡単に講評してみよう。
父親は元国鉄・JR社員だったが、僕自身は電車や路線そのものには単なる交通機関以上の意味を見いだしていない、このテーマに関しては完全に素人であることを先に断っておく。
この研究報告のタイトルはピチカート・ファイヴの「東京は午前7時」を個人的には連想してしまう。しかし、実際には筆者が実際に京成線に乗り込んで社内の雰囲気を確認するための小旅行を始めた時間帯を飾り気のないタイトルとして落とし込んでいる。
筆者は自分のテーマである京成電鉄のライバル、比較対象としてJR総武本線に注目している。夕刻の電車内の雰囲気が描写される。車両の作り(ボックス席の有無など)、客層、運賃、車窓から見える景色、乗り心地、利便性など、京成線とJR総武本線とのコントラストを描いている。実際、この短い文章に目を通すだけでそこには、この二つの路線にはっきりとした差異と言うべきものが存在することがありありとわかる。
漠然と京成電鉄研究を標榜しているわけでなく、京成線同様、東京都心と成田空港を結ぶJR総武本線を比較のための対立軸として設定した点はおおいに評価できる。また、その中で、二つの路線が「共存するのか、競合するのか」という問題提起を行っている。今回の報告を見る限り、筆者のテーマ設定も比較研究というアプローチも発展性が大いにありそうだ。次の報告を楽しみにして待ちたい。
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