研究

現在進行形のメディア状況

イラク国民の捕虜の一部が虐待にあっていたことを示す写真や映像が次々と出てきている。これは、イラク占領の局面において大きなターニング・ポイントになりうるだろう。


ベトナム戦争はアメリカにとって大きな教訓だった。メディアを通して反戦運動が盛り上がり、アメリカはベトナムから撤退せざる得ない結果になった。
それ以降の戦争において、アメリカ政府はメディア規制を徹底して、政府の方針に反する世論がメディアを通して形成されないように周到な対策を講じてきた。
湾岸戦争はその最たるものだった。いくつかのミスはあったものの徹底的な取材規制によって、メディア・サイドから反戦気運というものを形成させることを巧みに阻んだ。
たとえば、中東のカタールにある衛星放送局アルジャジーラの存在をアメリカ政府は当初無視しようとした。しかし、その影響力を無視できなくなってからは、積極的に利用しようと言う方針をアメリカ政府はとり始めたように思われる。
またアフガニスタンにおける一方的な攻撃でも、メディアを上手くコントロールすることによって国際的な非難を受けることはなかった。
ブリーフィングを頻繁に行うことによってアメリカ政府側に肯定的な世論構築をしたり、取材制限や大手メディアにプレッシャーをかけたりすることで、アメリカは国際世論をこれからも操作していくつもりだったに違いない。
イラクにおける今回の戦争においても、アメリカ政府は、これまではメディアをうまくコントロールしてきたかに思えたが、一部のイラク人は市民メディアとしてインターネットを活用する方法を知っていた。
メディア状況と国際情勢が密接にリンクしていることを考える上で、アブグレイブ刑務所におけるアメリカ兵によるイラク人の虐待が明らかになったこの出来事は重要だ。失墜した信頼を回復するために、アメリカ政府や軍はどんな方策を打ち出してくるのか。それとも、ベトナム戦争の二の舞になるのか。注目すべき状況が現在進行形で展開している、といっていいだろう。

ピックアップ記事

  1. 日常のコミュニケーションにストーリーを!
  2. One Book, Three Points, One Actionから始めよう…
  3. ストーリーは「心」を動かすための演出
  4. 相手にアクションを求めるなら「失敗談」と「成功談」をセットにしたストーリーを伝え…

関連記事

  1. 研究

    ハーバーマス

    最近ハーバーマスや公共圏論に関する本や論文を読んでいる。そこで…

  2. 研究

    ポストコロニアリズム

     これは岩波書店の「一冊でわかる」シリーズの中の一冊だが、入門的な概説…

  3. 研究

    15minutes

    午前中に、授業の関係でSilverlake life: The Vi…

  4. 研究

    KOBENA MERCER

    最近、大学院の授業関係でこの人の論文を読んだが、なかなか鋭い意見の持ち…

  5. 研究

    サブカルチャーについて考え始める

    バーミンガム大学に提出予定のエッセイとして、Ghettocentric…

  6. 研究

    テロとの戦い?

    アメリカという国は現代の地球や人類にとって、ひどく厄介な存在かもしれな…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

最近の記事

アーカイブ

  1. WEB

    YouTubeを使ってみた
  2. イギリス大学院留学

    ストに突入
  3. ストーリー思考

    私が経験したゲリラマーケティング
  4. 日記

    マジックハンド越しの微妙な距離感
  5. 研究

    The Harlem Renaissance
PAGE TOP