僕の読書に関する記憶は、一ヶ月に一冊家に送られてきた『世界名作児童文学全集』から始まっている。両親が僕のために定期購読してくれたのである。
高校時代の何かの機会に棚から取り出して眺めてみたことがあるが、装丁から各ページの紙の質、挿し絵までなかなか立派なものだった。
この中にはグリム童話もあったし、アフリカでの黄熱病の恐怖を軸とした物語も収録されていた。数ある物語の中で一番のお気に入りは『長靴を履いた猫』であった。この作品は、一番初期の段階で僕にエンターテイメントとしての読書という存在をもっとも強く僕に印象づけたものだと思われる。
その後、雑多な読書歴が始まる。イラスト入りの『こども百科事典』もずいぶんと僕の心を惹きつけた。出版社名さえ今となってはわからないが、素人でも描けそうな、簡単なネズミのマークがトレード・マークであった。これは、姉のものだったと思うが、ことあるごとに読んだり参照したりしているうちにいつの間にか僕のものになったという経緯がある。
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