憎悪と戦争の心理学

『敵の顔―憎悪と戦争の心理学 』 サム・キーン(佐藤 卓己・佐藤 八寿子訳、柏書房、1994)
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他者のステレオタイプをめぐる意欲的な論考である。
収録図版も多岐に渡り、そのイメージを一通り眺めるだけでもステレオタイプやプロパガンダのありかたについてさまざまな視野から考えることができる。
  こういった他者表象の研究書の中で本書が際だっている点は、著者が心理学的な視点をあちこちに導入している点である(訳者あとがきによれば、著者キーンはかつて大学で心理学を教えていた。また現在『サイコロジー・トゥデイ』という心理学系雑誌の編集にも携わっている)。


 また、後半ではステレオタイプの再生産や再強化を止めるためにどのようなことができるか、といったオルタナティヴの提出も建設的に行っている。難を言えば、扱う対象が広範に渡りすぎていて若干散漫な印象をこちらに抱かせてしまうことではないだろうか。

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