『文化と芸術表象』渡邉守章・渡邉保・浅田彰(放送大学教育振興会,2002)
表象文化研究を扱った本でバランスのいいものが日本に初めて現れた、と言っていい。表象文化研究という概念が日本に入ってきてから、まだまだ日は浅いと言っていい。欧米においては、表象を扱った本はかなり出まわっている感があるが、日本ではまだまだ数が少ない。
以前、東京大学出版会から出版された「表象のディスクール」シリーズを期待を持って手にしたが、これはひどくがっかりさせられる代物であった。なんだか、質の悪い学生の紀要論文集を無理矢理まとめ上げたような印象を受けた。
しかし、放送大学大学院のテキストとして編まれたこの本は表象文化研究にまつわる問題系をきちんと系統立てて、とりこぼしのないように配慮が行き届いている。
ただ、難点もある。東大の大学院といい、この本の著者たちといい、どうも芸術やハイ・カルチャーの表象に重きを置きすぎで、日本における表象文化研究のありようを無理矢理ゆがめようとしている意図を感じるのである。そのあたりのことを差し引いて読めば、評価できる本である。
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