最近の世界情勢において急速にフォーカスされるようになった国際テロリズムという概念。これはある事件を契機にして生まれたと言われている。
それは1886年5月4日のシカゴまで遡る。アナーキスト――その多くはドイツからの移民――による労働条件改善を求める街頭集会を解散させようとした警察隊に爆弾が投げられた。その結果、警官7人が死亡した。その後,スト中の2万人の労働者に警官隊が攻撃.労働者80人以上が死亡.オーガスト・スパイズらアナーキスト7人の指導者が,警官殺しのでっちあげで捕らえられ,うち4人が処刑された。これがいわゆるヘイマーケット事件(Haymarket Massacre)である。
この事件を機に国際テロリズムという概念が発生したという風に言われている。もちろん、この事件は、そのことよりも社会主義者の祭典であるメーデーの起こりとして広く知られている。
僕の研究関連では、1893年に開催されたシカゴ博覧会は、1872年の大火事からの復興と、不名誉なこの事件のイメージを払拭する役割を果たしたという風にRydellたちがFair Americaの中で言及している。確かに、国際テロリズムの発祥の地として、記憶される前にきらびやかな博覧会のイメージを都市表象そのものに上塗りするという判断は正しかったように思う。発展中だったシカゴという都市がどうやって現在のようなアメリカを代表する大都市の一つとしてのイメージ構築を行っていったか、ということも調べてみるとなかなか面白いかもしれない。
ちなみに、日本を代表する都市、東京の場合「世界一物価と生活費が高い場所」というのが外国において最も一般的に流布しているイメージのようだ。僕は、東京はそんなに捨てた場所ではないように思っている。文化的な猥雑さが醸し出すポストモダン的なイメージは通りを歩くだけでも好奇心を刺激する。
僕にとって東京に匹敵するくらい面白い都市は巨大文化都市ニューヨークくらいだ、今のところ。ロス・アンゼルス、ロンドン、チューリッヒ、バンクーバーなど、僕が訪れた大都市といわれている場所は、脱中心化が進んでしまってダウンタウンに何もなかったり、観光都市化して小綺麗にまとまってしまっていて面白味が感じられなくて、がっかりした記憶がある。
東京やニューヨークの魅力は肥大化した文化情報が整理されずにぐちゃぐちゃに配置されているところだと思う。それにしてもニューヨークも東京に負けず劣らず物価が高いことは確かだ。しかし、ブロードウェイやジャズなどの文化的で洗練されたイメージが先行する。またSeptember11以降、かなり熱心に都市イメージの再構築に励み、それが功を奏してきたことも確かである。
大都市がたくさんあるアメリカの都市間では、競争意識も手伝って都市のブランドイメージ構築がかなり意識的に行われてきた歴史がある。
東京ももう少し、国際都市の中の一つとしてのアイデンティティを考え直して、海外向けにプラスになるイメージやメッセージを打ち出して都市イメージの積極的な構築に励めばなんらかのいい変化を起こせるのではないかと思うけれど。
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