1893年にアメリカで開かれたシカゴ博覧会について調べている。バーミンガムでの研究対象はこれがメイン。日本での博士論文(まだ仕上げてはいない)は、ある対象をめぐる言説の歴史的変化について主に調べていたのだが、100年近い期間を一気に調べ上げたので、手薄なところがあったことを認めざるをえない。
こちらでの修士論文は、その反省に立って対象と時代をぐっと絞りこんだ。シカゴ博はアメリカで開催された万国博の中でもっとも成功した博覧会とみなされている。人種主義的な民族展示の仕方など、かなり問題含みだが、アメリカにおける文化史的なインパクトはかなり大きい。
日本での研究方法が時代背景をざっと概観するChronicle的なものだったと言える。一方で、今回の研究方法は対象にさまざまな角度から光を当てていくspectrum的な方法をとる予定でいる。
万国博は初の国際的メディア空間だと考えていいだろう。その中で人種、民族、階級、消費、娯楽、政治、言説、表象、都市、国家主義などの意味をアメリカの文化史的な視点を絡めて問い直していく。日本もこの博覧会には国家事業として積極的に参加している。まず、アメリカ側からの日本人や日本の表象を探る。同時に、日本側がどのように自己表象(self-represent)を行ったか、を調べる予定でいる。
朝、指導教官のDr.Lewisに偶然会って、15分ほど廊下で立ち話をする。かなり親切な人で、僕のための文献をネットで調べてプリントアウトしたものを「役に立たないかもしれないけれど…」などと言いながら渡してくれる。
その話の中で、シカゴ博の歴史的周辺の話が出たが、日本での研究で全体像をおおまかにつかんでいるので前後の文脈を自分の中でカヴァーできている、と感じた。日本での博士論文は確かに歴史的な「お勉強」の側面が強かったが、自分の身にはなっていると思うと、ちょっと救われた。
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