研究

『動物化するポストモダン』

若手批評家の東浩紀による、現代の日本文化をテーマにしたポストモダン論。この著者の本を読んだのは初めてであったが、読みやすく、論理展開がしっかりしている印象を受けた。ここで検討されているのは、個人的には馴染みのあまりないオタク文化というものだが、それぞれに関して丁寧に説明されているので議論についていくことは難しいことではなかった。ジャン・ボードリヤールが唱えたシュミラークル、つまり作品や商品のオリジナルとコピーとの区別が弱くなり、どちらでもない中間形態がさらなる増殖を示し、新たな段階に入ったということが日本のオタクの文化を分析することで見えてくるというのである。それはツリー型世界から、新たな段階であるデータベース型世界へ移行した、というのが基本的な主張である。


現代の日本文化にそれほど深く思いをめぐらせたり、分析することを怠ってきた僕のような人間にとってはかなり興味深く読めた。ところどころになるほど、これは気がつかなかった、という驚きがあってなかなか刺激的な内容になっている。
また、高校以来、つきあいがあるオタク的要素がある友人が口にしていたが、あえて尋ねることもなくやり過ごしてきた言葉がそこそこあったのだが、この本を読むことであの言葉はこういう意味があったのか、と確認する機会にもなった。

ピックアップ記事

  1. 日常のコミュニケーションにストーリーを!
  2. 相手にアクションを求めるなら「失敗談」と「成功談」をセットにしたストーリーを伝え…
  3. ストーリーは「心」を動かすための演出
  4. One Book, Three Points, One Actionから始めよう…

関連記事

  1. 研究

    無造作にあの研究誌が

    今、僕がいるバーミンガム大学といえば、近年、人文系の学問の流れを大きく…

  2. 研究

    テロと都市イメージの再構築

    最近の世界情勢において急速にフォーカスされるようになった国際テロリズ…

  3. 研究

    カルチュラル・スタディーズ: イントロ(3)

    カルチュラル・スタディーズのアプローチ ここまで、カルチュラル・スタ…

  4. 研究

    KOBENA MERCER

    最近、大学院の授業関係でこの人の論文を読んだが、なかなか鋭い意見の持ち…

  5. 研究

    米大学で「白人学」相次ぐ開設

    Good Bye Internet .comさんのところで知ったのだが…

  6. 研究

    テロとの戦い?

    アメリカという国は現代の地球や人類にとって、ひどく厄介な存在かもしれな…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

最近の記事

アーカイブ

  1. ストーリー思考

    ストーリー性のある詞を歌うバンドといえば……
  2. 研究

    エキゾティシズム
  3. 読書と出版

    ネットの「こちら側」と「あちら側」-『ウェブ進化論』を読んで-
  4. 日記

    文芸人 初のカラー版
  5. イギリス大学院留学

    帰国しました
PAGE TOP