『闇の王子ディズニー』

マーク・エリオット『闇の王子ディズニー(上・下)』(古賀林幸訳、草思社、1994)
ディズニーの生涯を活き活きと描いている。ディズニー社やウォルトの遺族たちの許可と協力を得ていない珍しい本だが、だからこその内容がふんだんに盛りこまれている。この本を読むとウォルトが気分屋で独裁者、ミッキーマウスの生みの親は彼ではなくて仕事仲間のアブ・アイワークスだったことなどがわかる。


 なぜ、この本のタイトルに「闇の王子」などと銘打ってあるのかというと、ウォルトがFBIへの情報提供者で、赤狩りの時期に、自分にとって都合のよくない連中に「非米活動家」や「共産主義者」などのレッテル貼りをし、不当に彼らを社会的に追い込んだ事実があったからである。このあたりは、写真付きの書類やFBI長官フーヴァーからの手紙など証拠が添えられていたりして、信憑性はかなりあるという印象を受けた。また、ウォルトが「厳しいしつけ」を父親から受けていたことは、どこかで読んだことがあるが、それが幼児虐待にまで至っていた事実は知らなかった。この作品は、そういったファクターも考察に含めることで、ウォルトの心の闇の部分にも迫ろうとしているところが他のディズニー伝とは一線を画していると言っていいだろう。

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