ヴァルター・ベンヤミン「複製技術の時代における芸術作品 1936」『複製技術時代の芸術』(編集解説 佐々木基一,1999)収録pp8~49)を読んだ。
20世紀初期のメディア論の代表作とされているベンヤミンの論文。ここでは、有名なアウラという用語が初めて使用されている。ベンヤミンによれば、アウラとは「どんなに近距離にあっても近づくことのできないユニークな現象」 だという。他の言い方をすれば、一つの作品が持つ歴史的証言力、権威、オリジナルの芸術作品が持つアクチュアリティー、それがアウラということになる。この論文でされている主張は、複製技術が発達することになった今、芸術作品に宿っていたアウラは急速に失われている、ということである。
ベンヤミンはここで、二つの芸術的な価値を基準にして論を展開している。一つは、礼拝的価値であり、もう一方は展示的価値である。
礼拝的価値とは、芸術作品をアウラとの結びつきの強さを中心にしたものである。それは、いわば古代において「魔法の道具」として崇められた絶対的存在を感じさせる人工物(たとえば、想像上の神をかたどった石や粘土など)、今でもオリジナルかコピーかでずいぶんその価値や値段に差が出る美術作品などが代表的な例である。
一方で、展示的価値を論ずる場合、アウラとの結びつきの強さは問題とならない。複製技術の発達は、芸術作品をさまざまな文脈で展示、所有することを可能にした。同時に、複製技術は芸術作品の礼拝的価値の基盤であったアウラの基盤を作品からはぎ取る(ウォーホールなどのポップ・アートを考えればわかりやすい)。
つまり、複製技術の発達により、礼拝的価値が相対的に社会の中で低下し、一方で展示的価値が増大しているという状況をベンヤミンは分析したのである。
オリジナルとコピーとの関係は、今日のデジタル社会において、さらに複雑になってきている。まだまだそれがシンプルだった時代に書かれた内容だが、現代にも通じる問題意識と鋭い考察が随所にちりばめられている。
はじめまして。
少し昔のエントリからTBをつけてみました。
(エラーが出たんでやり直していたら余分に入っちゃったみたいです。お手数ですが不要分を削除願います)。
「表象のディスクール」はぼくも読破しましたよ。面白いと言えば面白いんですが、基本的に akuzawa さんと同じような印象を持ちました。
時間ができたら、オススメの「表象文化研究」も読んでみようと思います。
TBありがとうございます。
初めてのTBなので、素直に嬉しいです。
そちらのブック・レビュー現在少しずつ
読ませていただいています。
ps.
不要分、削除させていただきました。