文章術

「仮説」を立てる習慣を! ―文章表現を苦痛や苦手にしないために―

論理的文章表現の考え方と実践

仮説を立てておくと、文章を書いていく作業がかなり効率的になる。仮説とは簡単に言えば「仮の結論」のことである。なぜなら、執筆段階における、ロードマップや航海図の役割を仮説が果たしてくれるからだ。

 

hypothesis.gif

地図が可能にするもの  

知らない土地を訪れたとき、その土地をカバーした地図というものは非常に心強い存在だ。

住宅地図の調査員のアルバイトを高校時代にしていたことがある。主な仕事は、見知らぬ土地の地図を渡されて、その土地に建っている住宅の世帯主を一軒一軒確認していくことだった。

  はじめて足を踏み入れる土地でも、地図が手元にあれば、このエリアを効率的に歩いてまわるには、このルートをたどればいいな、ということをイメージすることができる。

  しかしながら、地図がなかったらほとんどお手上げだろう。そのエリアを歩いてまわる上で効率的なルートを想定することは難しい。試行錯誤が増え、時間が余分にかかるだけではなく、不安や迷いが心の中で膨らんでいくだろう。さらに、モレやダブリが生じるなどして調査結果も質の低いものになる危険性も高くなる。

  文章における仮説は、こういった場合の地図にあたるものだ。仮説があれば、文章を展開する上での中間目標やゴールを想定することができる。

 仮説差異

  次に、その仮説を資料やデータや事例などとつきあわせて評価・検証していくのが執筆段階における中心的な作業となる。その中で当初の仮説の甘さやモレやムリや矛盾などの「仮説差異」に気がつくことが仮説をブラッシュアップする上で重要だ。

  その「仮説差異」への気づきを踏まえて、元の仮説に修正や是正を加えていくことで、より論理的でバランスの良い、説得力を持った論理的な文章表現にたどり着けるはずだからだ。

 

pdca_cycle002.gif

  つまり、しっかりと仮説をたてておけば、上図ののようなPDCAのサイクルに則って文章の論理性を高めていくことが可能となる。

  仮説がなければ、文章を執筆していく段階で試行錯誤が増え、余分な迷いも大きくなる。それがひどくなってくると、執筆作業そのものが苦痛になったり、文章を書くことに苦手意識を抱くようになりうる。そういったわけで、仮説を立てておくことは、文章を書くことを苦痛や苦手にしないための予防策とも考えることができる。

 

 ※ 上記の図は 西村克己 『スピード仕事術』(東洋経済新聞社) p157、PDCAサイクル@IT情報マネジメント用語事典などを参考に筆者が作図したもの。

non-hypothesis.gif

 よって、文章を書くことが苦手だ、苦痛だという人はひとまず仮説をたてることからスタートしてみてほしい。

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