巨大な牢獄のような空間に放り込まれた人々という特異な状況設定から物語は始まる。彼らは誘拐されたわけでもないし、社会的な罪を犯したわけでもない。彼らがそこに放り込まれた理由や意図は皆目わからない。ただ、わかっているのはうかつに動き回ると死に至らしめる罠があちこちに張り巡らされているということだけだ。
警察官、医者、知恵遅れの者、女子学生、脱獄のプロなど、そこに存在する人物像はそれぞれだ。意見を戦わせ、仲違いをしつつも、そこから脱出するという一つの目的に向かって彼らは動き始める。しかしながら、CUBEは美しいチームワークの物語ではない。極限状態に置かれたときに、それぞれの登場人物のエゴや暗い面が浮き彫りになっていく様子を心理的に描き出していくことにむしろ力点が置かれているとさえ思える。また、極限状態の中、人間的な倫理が崩壊していく様子も執拗に描かれている。最後に出口を見いだし、そこから脱出することになる人物は非常に意外な人物だ。
最後まで緊張感を保ち続ける一級の心理劇。人間のエゴの愚かしさを特異な設定で浮き彫りにした作品だと言っていいかもしれない。
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