若手批評家の東浩紀による、現代の日本文化をテーマにしたポストモダン論。この著者の本を読んだのは初めてであったが、読みやすく、論理展開がしっかりしている印象を受けた。ここで検討されているのは、個人的には馴染みのあまりないオタク文化というものだが、それぞれに関して丁寧に説明されているので議論についていくことは難しいことではなかった。ジャン・ボードリヤールが唱えたシュミラークル、つまり作品や商品のオリジナルとコピーとの区別が弱くなり、どちらでもない中間形態がさらなる増殖を示し、新たな段階に入ったということが日本のオタクの文化を分析することで見えてくるというのである。それはツリー型世界から、新たな段階であるデータベース型世界へ移行した、というのが基本的な主張である。
現代の日本文化にそれほど深く思いをめぐらせたり、分析することを怠ってきた僕のような人間にとってはかなり興味深く読めた。ところどころになるほど、これは気がつかなかった、という驚きがあってなかなか刺激的な内容になっている。
また、高校以来、つきあいがあるオタク的要素がある友人が口にしていたが、あえて尋ねることもなくやり過ごしてきた言葉がそこそこあったのだが、この本を読むことであの言葉はこういう意味があったのか、と確認する機会にもなった。
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