「もう大変なんだよ、職場に知れたら大変だから、ともかく一緒にあやまってほしいんだ……」などと語る電話がかかってきたという。
そう語ったのは、僕をにおわせる人物(?)だったとのこと。とはいえ、僕本人はそんな電話をかけた覚えはない。
この電話を受けたのは実家の母。声質が僕のものと明らかにちがうので、それを母が指摘すると、
「殴られて歯を折られちゃったから声がうまく出ないんだ」などと説明したという。
普通に考えれば、歯を折られても、声帯に変化は起こらない。ゆえに声質はかわりっこない。詭弁もいいところだ。
そう、それは、いわゆる一つの「オレオレ詐欺」の電話だった。
母が父に電話を代わると言った途端に電話は切れ、詐欺は未遂に終わった。
母と話した時点で詐欺電話の人物が語った話には、具体的なディテールがほとんどなかった。
何が大変で、なにを誰にあやまるべきなのか、どうして歯を折られなければならなかったのか……何もわからない。謎だらけだ。おそらく、相手の反応を見ながらディテールを組み立てていくというやり口なのだろう。
電話を受けたのが深夜近くで、実家の両親は既に寝入っていたということだから、はた迷惑な話である。
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