日記

マジックハンド越しの微妙な距離感

2月3日の朝のことでした。


寒空の下、
自宅の最寄り駅のホームで
私は通勤電車を待っていました。

急行電車を待っていた
私が利用しない
先発の各駅停車の電車がそろそろ
ドアを閉めて出発……という
タイミングで、
見た目からすると
20歳前後の若い女性が
駆けこみ乗車を試み、それは成功しました。

しかし、女性が電車に乗ろうとしたその瞬間、
彼女の耳からヘッドホンがはずれ、
白いコードとその先についていた
iphoneが
電車とホームの間にするすると
飲み込まれていってしまいました。

その女性はあわてて
その電車を降り、
同じホームにいた駅員さんのところへ行き
状況を説明しました。

その話を聞た駅員さん
(男性、おそらく20代前半)は
非常に冷静で
顔色一つ変えませんでした。

「まず、この電車を発車させまーす。
シュッパーツシンコー!」と電車の進行方向に向かって
合図をしました。

そうやって電車がホームから離れた後、
柄の部分が木製の
先が金属性の2.5メートルほどの
長さのマジックハンドを
どこからか持ってきました。

子供用のおもちゃの
マジックハンドしか
見たことのなかった私は
「おお!初めて業務用の
本格的なマジックハンドを見た」などと
変な感動を覚えていました。

そのマジックハンドを使って
線路近くに落ちていた
iphoneと白いコードをあっという間に
駅員さんは拾い上げました。

駅員がマジックハンドの先から
iphoneとコードを
ピックアップし、それから
女性に直接手渡し、
彼女がお礼を言う……という場面を
勝手に私はイメージしていました。

しかし、予想は大きく外れました。

駅員さんは
iphoneとコードをつまんだままの状態
のマジックハンドの先を
ゲームセンターの
クレーンゲームのように移動させ、
その女性の顔の前に突き出したのでした。

彼女はそれをマジックハンドの先から
受け取り、
マジックハンド越しの
微妙な距離感のまま
駅員にお礼を言い、
次の電車を待つ列に並びました。

なんとなく彼女の表情がこわばってみえたのは私だけでしょうか。

おそらく、彼女も
駅員さんから直接手渡しされ、
もう少し人間的な距離感で
(少なくともマジックハンド越しではなく)
お礼を伝えるイメージを
思い描いていたように、
私は想像したのですが実際のところ
どうだったのでしょう?

なんとなく、なんとなくですが、
マジックハンドで拾い上げる対象としては
危険なものや汚いものというイメージがあります。

そうしたこともあるので、
一度その先から落下物を取り上げてから、
落とした本人に直接手渡しした方が
親切に感じられるのかな、などと
サービスのあり方について
あれこれ勝手に思いをめぐらせた朝でした。

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