オーストラリアの映画関係者が、米豪自由貿易協定(FTA)交渉で、米国が豪州に映画やテレビなど映像メディアの市場開放を求めていることに対して、「豪州文化が侵害される」と強く反発している。
まず、はじめにFTAは何の頭文字か確認しておくと、Free Trade Agreement。
ともかく、難しい問題だ。こういった市場開放の要求を拒否するのに合理的な理由を見いだすのは難しい。
ところで、この記事で取り上げているオーストラリア映画「ベイブ」は、よく知られているように地味な子豚の奮闘物語である。
しかし、主人公の一人勝ちの競争原理がストーリーの主流を占める典型的なハリウッド映画とは傾向を異にした、共生がテーマになっているという指摘をしている論文を昔読んではっとした記憶がある。そういった独特の価値観がオーストラリア文化に根付いたものであるのなら、失われるのは寂しいことかもしれない。
しかし、オーストラリアの映画人もこれを機に新しい刺激を受けて発憤する可能性もなきにしもあらずである。いたずらに保護しても、国内の映画産業自体の勢いを失わせスポイルすることになりかねない。
もちろんグローバルな市場原理からすると、こういった流れは自然に思える。その一方で、グローバルな多文化主義的な視点からいえば、ちょっと待てよ、ということになるかもしれない。
結論は簡単には出せないが、ことの成り行きを見守りながら考えていきたいと思う。
実際、イギリスのHMVなどでもイギリス映画のDVDを探そうと思うとけっこう苦労する。一般の棚に並んでいるのは、ほとんどアメリカ映画だ。日本にいるとき、イギリス市場は、なんとなくハリウッド映画を拒んでいるような印象を持っていたが、現状はぜんぜんちがう。ハリウッド映画の独壇場に近い感じである。
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