伝えるべきことをワン・メッセージに凝縮しておくことの効果

論理的文章表現の考え方と実践

文章を楽しく効率的に書く上で大いに役立つ方法をご紹介しよう。

実際に書き出す前に、文章を通して伝えたい自分のメッセージをワン・メッセージにまで凝縮しておくのだ。

文章はメッセージを伝えるためのコミュニケーション・ツールだ。にもかかわらず一番肝心なメッセージが曖昧なまま書き出す人が実に多い。
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自らが伝えるべきメッセージが曖昧なままだと、書く行為自体も苦痛や迷いに満ちたものになる。さらに文章内容に明確さや明快さが欠け、メッセージ自体が伝わらない危険性が高まり、さらには誤解を含んだメッセージを読み手に与える恐れもが大きくなる。

そういったリスクを避けるために「これだけは絶対読み手に伝えるんだ」というメッセージをワン・フレーズにして書き出しておこう。


具体的には、コピーライターになったつもりで、企業や商品のキャッチ・コピーなどを参考にして、自分にとってわかりやすい簡潔なフレーズをつくっておく。創造のプロセスをぜひ楽しんでこの作業を行っていただきたい。

伝えるべきメッセージをワン・フレーズに凝縮することは、メッセージ内容の本質について考えることなしには不可能だ。それゆえ、メッセージ内容やものごとの本質を実際の執筆や文章作成以前から自分に問いかけるようになる。

実際に、キャッチ・コピーの例から考えてみよう。

「東京23区に家を建てられますか?」
(ブルータス445号 1999年11月15日発売)

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斎藤和弘編集長(現在は「VOGUE.」編集長)時代のブルータスは特集の内容がワン・メッセージに凝縮されている。

「東京」それも23区内に「家」を「建てる」、フォーカス・ポイントが明らかだ。

そのためにはどんな選択肢があるか、戦略があるか、準備が必要か、などの
切り口のヴァリエーションが特集のワン・メッセージを支えることになる。

もう一つ例を挙げておこう。

「チョコレートは、ひとを幸せにする。」という明治チョコレートの広告。

もしあなたが明治チョコレートの社員で、このポイントを押さえていれば、あとはどのようなチョコレートが人を幸せにするのか、人を幸せにしていくにはどのようなチョコレートを作るべきかを自分に問い続けていけばいい。スタンスはかなり明確になるだろう。
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この効用が非常に大きい。文章を書きながら、本質について考え続けること、これができていれば、本筋に必要のないものを自分の文章の中に混入させていないかを即座にチェックできる。無駄書きも少なくなる。メッセージもぶれなくなり、脱線も少なくなるので論理構成や話の内容が読み手にとっても明確になる。

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伝えるべきメッセージの本質さえ押さえられていれば、メッセージを読み手に効果的に伝えるための論理的構成や表現をさらに工夫するような一歩先の余裕がで
きる。

したがって、自分の中で伝えるべきことがワン・メッセージに昇華していれば、文章を書くことは楽しく創造性に満ちたものになる。

そのワン・メッセージに具体例や論理展開といったものをぶつけながら文章を書き、自問自答を繰り返していく。すると、自分が本質だと思っていたものが部分的に間違っていて微調整が必要だということがわかったり、より深い一皮むいた本質の存在に気づくという体験をするようになる。

そういったプロセスを経ていると、文章を書きながら自分の思考が深まり成長していることを実感できる。よって、また文章を書いてみたいと思うようになる。お薦めの方法だ。

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