スティーブ・ジョブズも実践していたストーリー思考

はじめに

同じ仕事やプロジェクトに取り組んでいても、メンバー同士の取り組む姿勢や目標のイメージがバラバラだとうまくいきません。後からいろいろと問題が出てきます。

そうした場面において、リーダーシップを発揮すべき立場にいた場合、あなたに求められるものはどのようなことでしょうか?

 

リーダーに求められる3つのポイント

大きく3つのポイントをカバーする必要があります。

第一に、まわりのメンバーに仕事やプロジェクトの目的・意義などを共有すること
第二に、当事者意識を持ってもらうこと
第三に、仕事やプロジェクトの計画とゴールを理解してもらうこと

20131130goalphoto credit: brtsergio via photopin cc

とはいえ、実際にどうする?となるとイメージがうまく持てない人の方が多いのではないでしょうか?
そうした場面こそ、ストーリーの力を活用しましょう。

なぜならストーリーには第三者に目的やゴールに対する共通のイメージを抱かせる力があるからです。

 

big whyに裏付けられたbig storyを語る

さらに、あるポイントを押さえることにより、第三者に当事者意識を持たせることもできます。

ポイントはbig whyに裏付けられたbig storyを語ること。

 big whyとは一言で表現すれば、大きな志。
 big storyはそれを実現するためのビジョン。

たとえば、松下電器産業(現パナソニック)の創始者・松下幸之助氏は次のような大きな志とビジョンを従業員に示しました。

「水道の水はいくら飲んでも咎められることがない。それは価格が安く、量が豊富にあるからである。そのため、物資を豊富に生産し、廉価で提供することで貧困を失くし、人々を幸福にできる」

 

いわゆる水道哲学と呼ばれる有名な考え方ですが、単に電気製品を作って、売って儲ける、というビジネスの話で完結していないことに注目してください。

自分たちの事業が人々ひいては社会の幸福を実現するという、最近の言葉で言えば社会起業家のような大きな志とビジョンを示しています。

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photo credit:angelocesarephotopinccvia

 スティーブ・ジョブズの言葉

また、アップル創業者スティーブ・ジョブズがbig story+big whyをうまく活用していたことを示す有名なエピソードも残っています。

 

ペプシコーラの事業担当社長をしていたジョン・スカリーをアップルの社長に引き抜くさい、ジョブズはスカリーに次のように言いました。
 
 

「このまま一生、砂糖水を売りつづけるのか、それとも世界を変えるチャンスをつかみたいか。」(Do you want to sell sugar water for the rest of your life, or do you want to change the world? )

 

こうした大きな志big whyを聞かされると、人は共感し、そのビジョンbig storyを実現するために自ら進んで何かしたいと思うようになります。

 

映画 『幸せのきずな』

たまたま先日、『幸せのきずな』という映画をDVDで観ました。このことを考えるのにうってつけの作品でした。

 
あまなつShopあまなつで見る同じレイアウトで作成

その中に、big whyの力で一瞬にして他人に当事者意識を喚起する場面があったからです。

この映画、実話に基づいた「車のワイパーのスピード調整の技術」を考案した男とその家族の物語。

「車のワイパーのスピード調整技術」と聞くとなんとも地味な印象を持ちませんか?

確かに前半やや退屈に私も感じました。単純な発明物語だと早合点したからです。

しかし、そうではありませんでした。

 

不可視のバッジ

彼の発明した技術をフォードのような大企業が何の断りもなく「盗んだ」事実が発覚したからです。

紆余曲折があり、主人公は法廷で争う決意を固めます。

しかしながら、弁護士たちは、自動車会社との和解や示談を受け入れることによって金銭による解決を勧めます。

彼はそれを望みませんでした。そして、彼は結局法廷で自分を自分で弁護するという選択をします。

原告であり弁護人の立場をとったのです。

その裁判の最終弁論で彼が口にした言葉が印象的でした。

「私はこの法廷に入ってくる前から、胸元にバッジをつけています。これは不可視の、目に見えないバッジです……それは正しい手段で社会に貢献したいという意志を象徴するバッジです。」

これが彼のbig whybig storyですね。

(フォードの原告や弁護士側を指さして)
「彼らには立派な大企業を象徴するバッジが胸に輝いているかもしれない」

「しかし、正しい手段で社会に貢献する意志を象徴する良心のバッジはつけてはいないようです」

(陪審員に向きなおって)
「私はあなたがたの胸に社会的良心を象徴する私と同じバッジがついていると信じています」

映画の場面を正確に再現したものでありませんが、だいたいこのような流れです。

20131130badge photo credit: eagle1effi via photopin cc

不可視のバッジ、目に見えない良心のバッジというイメージは絶妙です。

それを聞いた陪審員の具体的な身体の一部についている様子をイメージさせるからです。

「あなたがたの良心を信じます」といった抽象的な表現では生み出せない臨場感を創り出しています。

不可視のバッジをイメージさせることで陪審員の当事者意識はかなり高まり、明確になったはずです。

つまり、自分の胸に不可視の良心のバッジがあるか、ないかを想像するだけでなく、そのことを自問自答するようになる。こうなると、もう対岸の火事ではなくなるわけです。

 

おわりに

あなたがリーダーシップを求められる場面において、big whyとbig storyを語ることにより、まわりのメンバーに仕事やプロジェクトの目的・意義などを共有し、当事者意識を持ってもらうよう働きかけてみてはいかがでしょうか。

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