8mile

シネマメディアージュにてパートナーと8mileを観てきた。
白人ラッパーEMINEMの半自伝的映画。そもそもEMINEMの名前を知ったのは、2000年ワシントン州立大への交換留学生時代だった。アメリカ研究の授業でも、何度か話題に上った。僕の手元にあるアルバムは2枚。

Vanilla Ice, Snowなどの白人ラッパーやBeastie Boysなどの白人ラップ・グループはこれまでも音楽シーンに登場してきた。しかし、ここまで鋭くとがったライムを刻む白人ラッパーはいなかった。EMINEMのラップは、なんというか、かなり黒いラップなのだ。EMINEMは、もう既に一つの現象と言っていい。それは、まるでロックン・ロールにおけるエルヴィス・プレスリーそのものである。つまり、黒人によるサブ・カルチャー的な状況にあったロックン・ロールを白人のエルヴィスが取り入れ発信することで、一気にロック自体が人気を博し、メインストリームに合流するようになった一つの現象と酷似しているのだ。

ラップ自体は、徐々にメインストリームに合流しようとしていたが、EMINEMの登場はその流れを加速させ、ラップ・ミュージックをサブ・カルチャー的な位置づけから、一気にメインストリームの音楽シーンにまで押し上げたということが言える。エルヴィスは独特のセクシーな振りつけで不道徳などの誹りを受け、物議を醸した。EMINEMもその歌詞に含まれた攻撃的な内容や、訴訟沙汰を含むスキャンダラスな言動などで物議を引き起こしている。

黒人が培ってきたマイナー文化を白人が取り入れた途端、大受けするという社会構造は今も昔も変わらないようだ。

映画”8 mile”は、ハリウッド映画お得意の、努力を重ねて主人公が成長して成功する、といったものではない。EMINEM演じる白人ラッパーRabbitは家庭環境、仕事環境、恋愛を含めた人間関係、すべて絶望的な状況に追い込まれていく。そこでやっと、何かを自分で見いだしはじめる。最後にクライマックスである勝ち抜きラップ合戦があって、一応の幕引きになる。しかし、なによりも映画全編が終わってから流れ始めるEMINEMの曲、”Lose Yourself”の歌詞の日本語訳の字幕に観客の誰もが釘付けになっていて、その曲が終わるまで席を立とうとする人はいなかった。その歌詞に含まれた飾りのないストレートなメッセージを胸に観客は映画館を後にすることになる。上映中の映画なので、あまり細かいストーリーに触れることは避けるが、すごくための効いた映画だというのが、個人的な感想だ。

コメント

  1. TB有り難うございます。
    エミネムの生き様を表現する方法がライムを刻むことなんだなぁと。
    で、8Mileの邦訳はよくこなれた表現だったなと、感心しました。
    英語は勉強しまーす。

  2. Lose Yourselfの訳もストレートでわかりやすいと感じました。イギリスのテレビ番組でもよくEMINEMをみかけます。

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