私たちは身近な人々について「知っているつもり」になっていることが多いものです。 しかし、いざフタを開けてみると実はほとんど何も知らなかったことに気づき愕然とすることが少なくありません!
それが原因で、職場の人間関係が知らず知らずの内に悪い方向に傾き損をする。恋人との仲がきまずくなる。家庭が取り返しのつかないことになる…そんなケースはできるだけ避けたいですね。今回は、そんなあなたの人間関係力アップに役立つストーリー思考についてお話ししたいと思います。人間理解力を向上させることによって、そうした「知っているつもり」リスクを減らし、人生を円滑にするツールとして、ストーリー思考を活用していきましょう。
▼目次
■陥りがちなワナにはまらないために
一緒に過ごしている時間が長くなれば長くなるほど、相手のことを「理解しているつもり」に私たちはなってしまいがちです。
さまざまな会話のキャッチボールの中で、相手の性格、仕事における専門分野、プライベートにおける趣味や興味といった相手の特徴となるポイントを私たちは漠然と把握しています。
しかし、それで十分だと言えるでしょうか?
実はそれは、あくまで相手に関する情報を複数の「点」として断片的に理解しているだけであって、「線」や「面」としての理解になっているとは言い難いのです。
よりよく相手を理解しようと思えば、やはり「線」や「面」となる相手の全体像を把握する動きをとるべきです。さもないと、冒頭で述べたように「理解しているつもり」で実はほとんど理解していなかったという状態に愕然することになるどころか、人間関係がいつの間にか悪化していた…そんな事態になりかねません。
それでは、相手を「点」ではなく「線」や「面」として理解するにはどうすればいいの?という疑問がわいてくると思います。そういった時にこそストーリー思考を活用してほしいのです!
■相手のストーリーに思いを馳せる
その方法は、実にシンプル。周囲の人と会話をするさいに、この人は「どんなストーリーを生きているのだろう」と考えながら話を聞くだけです。
ここでいうストーリーとは、あまり厳密なものではなく、どんなライフスタイルや生活パターンを持っているのか、そんな簡単なもので十分です。 たとえば、あなたが働いている会社に新しいメンバーが入社してきて、初めて二人で会話する機会があれば「お住まいはどちらですか」とあなたは尋ねるでしょう。その答えに「近いね」「遠いですね」くらいの感想で終わらせてしまうケースも多いかもしれません。
しかし「この人はどんなストーリー(ライフスタイルや生活パターン)を生きているのだろう」という思いを持つと、相手に対する好奇心や興味がぐっと増します。相手のストーリーに興味を持つと「点」を知るだけでは満足できず、「点」と「点」の間にある線の部分、プロセスが気になるようになります。
その結果、自然に話を掘り下げたり、広げたりしていくことができるようになり、周囲の人々に対する情報収集能力が飛躍的にアップし、それにともない、あなたの人間関係力も向上するというわけです。
■誰もがそれぞれのストーリーを生きている
たとえば、同僚に住まいを尋ねて、会社から自宅までの距離が遠いことがわかれば、通勤プロセスが気になります。そこで電車での通勤時間に何をしているかを尋ねることになります。 参考までに、実際に私が先日、会社の同僚とかわした会話の一部を紹介しましょう。
私「……通勤時間が約1時間半か、ちょっと長いですね。電車の中では立っていることが多いですか?それとも比較的座ってこれますか?」
同僚「わりと座れることが多いですね」
私「通勤の間、何をしていることが多いのですか」
同僚「月額○○○円支払うと、映画が見放題になる動画配信サービスを使っていて、スマホで行きと帰り一本ずつ映画を見てます。通勤時間が普通の映画一本分くらいなので」
私「たとえば今日、会社に来るまでにどの映画を見たんですか?」
こんなちょっとした会話だけでも「1日2本の映画を通勤時間に見ている」という同僚が生きているストーリー(ライフスタイルや生活パターン)が浮かび上がります。このストーリーをヒントにして、会話を広げることも深めることも自然にできるようになります。映画好きなことがわかったので、映画を好きになるきっかけになった作品は何なのか、どんなジャンルの作品が好きなのか、週末は映画館に行くのか……などなど。
■相手のストーリーに関心を持つことの効果
こうした場面でのストーリー思考の効果について簡単に整理してみましょう。
まず、周囲の人々のストーリーを知ろうとすることが、あなたの中にある好奇心や興味のスイッチをオンにします。
通常、自分に興味・関心を持ってくれる他者は自己重要感を満たしてくれる存在なので相手はあなたに悪い印象を持たないはずです。むしろ、あなたに対して好感を持つようになるケースの方が多いでしょう。 次に、まわりの人々のストーリーに関心を持つことで、点だけではなく線や面をイメージしながら、相手の情報を収集し、整理しながら聴くことができるので、あなたの情報収集能力と情報整理能力が高まるのです。
そのようにして、あなたのまわりにいる人々がそれぞれどんなストーリーを生きているのかを自分の中でイメージしやすい状態にしておくと、その後の人間関係におおいに役立ちます。
たとえば、相手にとって的外れな言動を減らすことができます。気遣いもしやすくなります。会話もしやすいでしょう。なぜなら、相手のストーリーをイメージできるようにしておくことで、相手に対する想像力のスイッチがあなたの中で無意識のうちに入るようになるからです。
それがあなたの人間理解力の向上につながり、周囲とのコミュニケーションを円滑にさせます。その結果、あなたの人間関係力を高めていくプラスのサイクルに結実するようになるのです。
■「共演者」のストーリーをいかに掘り下げるか
特に気を付けてほしいのは、周りの人々は、あなたの人生ストーリーの脇役ではなく「共演者」だということです。
あなたのオリジナル・ストーリーを紡ぎだしていくパートナーであり、かけがえのない協力者、そしてチームのメンバーなのです。それはあなたの上司でも、同僚でも、恋人でも、家族であっても変わりはありません。
そうした身近な共演者それぞれのストーリーを理解することは、人間関係の向上に役立つだけではありません。共演者のストーリーを掘り下げ、意外な素顔や価値観などを理解することは、きっとあなたの人生ストーリーをより面白く、意義深いものにしてくれるはず。
常に周囲の人々の声に耳を傾け、新しいストーリーを発掘する旅と冒険を日常の中で続けて行くことが、あなた自身のストーリーを形作っていることを決して忘れないで下さい。周りの人々のストーリーを知ることが、あなたの人生のストーリーをより豊かで深みのあるものにするのです。
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