前回、ストーリー思考の4大ステージについて考え方の詳細を解説しましたが、これらの基本が理解できたら、いよいよ実践編ということになります。今回はほんの一例ではありますが、実際にストーリー思考をビジネスの場面で活用する方法をご紹介しましょう。
たとえば、あなたの中で仕事に対するモチベーションが落ちているとします。割り振られた仕事に対して「やらされ感」が先行して、なかなか前向きな気持ちで取り組めない。手を付けるのが億劫で、目の前の仕事をついつい先延ばしにしてしまっています。
そんな時こそ、ストーリーの力を使ってみましょう。その一つとして、仕事の着手から完了時までのプロセスを、あなた自身を主人公としたオリジナル・ストーリーとして、頭の中で思い描いてみるのです。
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そのストーリーが冒険物語なら、あなたはその冒険を勝利に導く使命を帯びた勇者ということになります。すると仕事のプロセスは、あなたという勇者が最終目的を果たしハッピーエンドを迎える冒険の道のりだとの意味づけができますよね。
このようにストーリーの力を使って、仕事の意味合いを「ヒトごと」から「ジブンごと」に意識的に切り替えることで、漠然と仕事に取り組むときにまとわりつきがちな「やらされ感」を払拭するのです。その結果として、主体的かつ高いモチベーションで仕事に取り組めるよう、あなた自身の意識を望ましいピーク・パフォーマンス状態にコントロールすることができるというわけです。
仕事の質を上げるために
ただし、ビジネス・シーンで結果を出していくには、高いモチベーションで仕事に臨むだけでは不十分です。すでにお伝えしたように、モチベーションの高さイコール仕事の質の関係性は必ずしも成立しないからです。
ビジネスは結果が求められる世界。いくらモチベーション高く「頑張った」としても結果を出すことができなければ評価は得られません。
とはいえ、心配は無用です。仕事の質をアップさせるヒントもストーリーの中にきちんとインストールされています。そのヒントは「ストーリー思考」フレームワークにおける「勝利」のステージにあります。
ポイントはあなたが取り組んでいる仕事の「勝利」の形、ハッピーエンドの場面をしっかりとイメージすること。たったこれだけです。しかし、仕事の質をアップする上できわめて重要なポイントなのです。
「勝利」の形をイメージする効果
「勝利」の形をイメージすることが、あなたの仕事の質をアップする上でどのような効果をもたらすのでしょうか。その点について少し整理してみたいと思います。
まず「勝利」の形をしっかりイメージすることで、目指すべき仕事のゴール、あなたが求めている最終結果がはっきりします。そうしたイメージなしに仕事に取り組むと何をすべきかが曖昧なまま、締め切り間際になってなんとか形にする、その場しのぎ的な仕事になりがちです。冒頭で紹介した「点」的思考に基づいた典型的な仕事のやり方ですね。
一方で、あなた自身が求める最終結果が明確になっていれば、それを実現するための条件も明らかになります。つまり、ゴールから逆算して、なすべきことと、そうでないことの仕訳ができるようになるのです。これだけでゴールに向かうアクションの効率がぐっとよくなります。
この時点で、あなたは仕事全体を「線」もしくは「流れ」でとらえられるようになっています。あなたが求めるハッピーエンドを実現するためのオリジナル・ストーリーを組み立てるために、仕事のプロセス全体を俯瞰し脳味噌をフル回転させているはずです。
さらに、仕事の質をアップするためには、あなたの上司なり、営業先の担当者の求めているもの、あなたの仕事結果を受け取ったときに見せるであろう反応などを思い描きましょう。これをしてはじめて、仕事の質をどのレベルまでコントロールすべきかがクリアになります。
そうした後で、あなたなりのこだわり、創意工夫や新提案といった付加価値を付け加えるようにすれば、ハッピーエンドはより実現性を増すことになるでしょう。そこまでできれば、あなたは立派な「デキルヤツ」です。
あなたのまわりにいる「デキルヤツ」は、このあたりのことを意識的に、経験的に、最終的には無意識かつ自然にできている人間です。だからこそ、モチベーション高く、仕事の取り組みもスピーディーで、質の高いアウトプットを継続的に行うことができているのです。
しかし、意識的に「ストーリー思考」を実践していけば、あなたが彼らの仲間入りを果たす日はそう遠くないはず!
まずは目の前の仕事を、あなたを主人公としたオリジナル・ストーリーの舞台だと捉えてみましょう。その舞台で手にしたいハッピーエンドを明確にイメージすることから、あなたの「ストーリー思考」を始めてみてはいかがでしょうか。
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